道の駅物産館展示パネル+商品POP

道の駅「森と湖の里ほろかない」にある物産館に掲示するパネルを作成しました。

「道の駅を訪れた方に幌加内町のそばを紹介する」という趣旨のみの指示でしたので、パネルという素材を念頭にどういった内容が興味を持ってもらえるか、どのような表現が伝わりやすいかということを考えつつ提案しました。

主軸として提案したのは、以下の4つです。

  • 数字で見る日本一のそばの里幌加内
  • 幌加内そばの作物としての情報
  • 栄養からみるそば食の有用性
  • 幌加内とそばの歴史

数字で見る日本一のそばの里幌加内

1については、「日本一の作付面積・収穫量」というのがビジュアルで見て感覚的に分かるものがあると良いなと考えたので、農林水産省の統計データを参照してグラフを作成しました。
作付面積・収穫量については、いきなり市町村単位で比較するのではなく、

全国における北海道のシェア
  ↓
支庁別の比較
  ↓
市町村別

と段階を踏んで直感的に理解できるものにするため、北海道の地図にグラフを合わせたインフォグラフィックで表現しました。

作付面積

収穫量

幌加内そばの作物としての情報

ご承知の方もいらっしゃるかとは思いますが、幌加内町には「ほろみのり」という町独自のそばの品種があります。道内全域で最も栽培されている「キタワセ」という品種のそばを改良して作った品種です。
小さな町の単位で独自品種を持っているというのはかなり珍しいことのようで、なおかつ「ほろみのり」はそばとしての人気も高く、そばは食べる以外に関わることのない立場ではありながらも、何が違うのだろうと興味がありました。

パネル作成のために「ほろみのり」品種を開発した幌加内町農業技術センターの資料などをご用意いただけたので、資料のなかから一般の方にも興味深いと思ってもらえるポイントに絞ってパネルにしました。
とはいっても、つまりは自分が「へぇ!」と思ったところをビジュアルを用いて表現した、という感じです。

他にもご用意いただいた資料の中に、「長柱花と短柱花」に関する資料がありました。
ほろみのりに限った話ではなく植物としての「そば」に関する情報ですが、個人的に「あーーー!そういうことか!」と思ったので、ぜひパネルにしたいと思って提案しました。

常々そばの花の写真を撮影していて、ビビッドなピンク色の雄しべがすごく見えるカワイイ花と、雄しべが見えないいわゆる白い花、という感じの花があるなぁとは思っていました。
成長の度合いの問題で、もうすこし育ったら雄しべが伸びてくるのかなぁと思っていたのですが、この資料を見たときに「(゚ω゚)そゆこと?!!」となりました。しかも、それぞれ違う型で受粉しないと実らないとか!
控えめに言って、興味しかないですよね! ・・・え、そうでもない?

個人的にこういう小さな「へぇ!」を知ることができるとより一層「へぇ!」となる情報を求めちゃうので、これはふらりと立ち寄った方が見るともなしに見て「興味を持つ”きっかけ”になるパネル」に合っている素材だぞと、意気揚々とほろみん研究員を描きました(笑)
私と同じようにこれをみて「へぇ!」と思う方がいたらいいなぁ~♪

栄養からみるそば食の有用性

一般的に、そばというと「健康的」という印象があります。
ちょっと詳しい方は「ルチン」の抗酸化作用などに注目されていることも多いですし、血糖値をあげにくい低GI食品だからと主食にそばを選ぶ方もいらっしゃいます。
私自身もざっくりとした印象はそんな感じで、鳥頭を自覚している身としては「そばの何が健康に良いのか」ということを思い出そうとしたときに「ルチンとかいう栄養・・・って何にいいんだっけ?」とか「血糖値が・・・なんだっけ?」とかそういう曖昧な印象でした。

今回のパネルを作成するにあたり、そばの「健康的である」という側面をきちんとした形にしてみたいと考えました。
というより、さすがに気になってきちんと調べてみた、という感じです。

個人的にはわりと一般に浸透している健康的キーワード「ルチン」よりも、そばに含まれる「タンパク質」についての情報がこれまであまり気にしていなかったこともあり、非常に興味深かったです。
栄養学など一切分からないながらも、あれこれ深掘りしていって「へぇ!」と思った項目をできるだけシンプルにパネルにまとめました。

そばそのものだけでなく、そばの花から採取した「そばハチミツ」も幌加内町で販売されている商品の一つです。

そばハチミツは色が黒く、ちょっと香りにクセがあると言われて好き嫌いが分かれるアイテムですが、ヨーロッパあたりでは子どもの喉の痛みや咳によく効く食品として使用すると何かで読んだことがあり、気になっていました。
咳や喉に良いというソースがないかとネットの海をググり倒していたのですが、上記のような漠然とした民間療法的な記述があるだけでした。
食品成分データベースで調べても「ハチミツ」については、種類も何も区分なく単に「はちみつ」という項目があるだけ。

砂糖及び甘味類/(その他)/はちみつ – 01.一般成分表-無機質-ビタミン類
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=3_03022_7

喉・咳うんぬんを抜きにして、そばハチミツの栄養価などの情報はないかと調べていたところ、かろうじて一つ面白い研究結果の論文を見つけました。

はちみつのミネラル類の含有量について – 著者 箱山 年子, 荻原 和夫

これが想像以上に面白かった。

一般的には「ハチミツは栄養価が高くビタミン、ミネラルも豊富に含む」との表現でよく紹介がなされているが、具体的にどの位の含有量があるかを示されている資料も少ない。

はちみつのミネラル類の含有量について 

だから実際のところどうなのか調べてみた、というスタンスで始まる論文なのです(笑)
国産ハチミツについては、みかん蜜、れんげ蜜、とち蜜、くり蜜、アカシア蜜、そしてそば蜜という種類が比較されています。
そして、最終的な結論としては

食品の効能などの解説書に「はちみつは栄養価が高く、ビタミンやミネラルも豊富に含む」というような表現が使われていることがある。また一般的にそう思い込まれているようであるが、それは白砂糖(ショ糖)に比べて多いという程度のことである。

はちみつのミネラル類の含有量について 

とあり、大いにずっこけました(笑)
しかし、それで終わってはパネルはできません。一つとても有用な情報があったのです。

ただ、量的には少ないが含有ミネラルの種類は多いとの報告もあるし、また一部の品種、例えばそば蜜や月桂樹蜜の鉄分などは多目であることが注目され、貧血防止に効果を示したとの動物実験の報告もある。

はちみつのミネラル類の含有量について 

実際、鉄の含有量の記載箇所では下記のような記載があります。

また鉄の含有量もカルシウムと同様に採蜜植物の違いで含有量が異なり、そば蜜の3.1mg/100gは特別に多いので例外として除いてみても、みかん蜜の0.3mg/100gから月桂樹蜜の1.99mg/100gと大きな分布幅になっており、そば蜜を除いた平均値は0.73mg/100gとなっている。そしてそばを除く国内産品の平均値は0.45mg/100gであり、国外産品の平均値は0.95mg/100gとなり、国外産品の方が国内産品より2倍以上も多い結果となっている。

はちみつのミネラル類の含有量について 

そば蜜除かれすぎでしょ!(笑)

どうやら、そばハチミツの鉄分含有量は規格外のようで、これには個人的に興味が沸きました。私自身、普通の血液検査で貧血とは診断されないものの、潜在的な鉄不足いわゆる”鉄欠乏”気味。
鉄欠乏気味な女性は多いみたいで、昨今では「テケジョ(鉄欠乏女子)」の健康によい食事や生活習慣などのガイド本などが話題になっています。
これは、パネルの一つに良いかも!と早速提案しました。

そろそろ息切れしてきましたが、これ、実績紹介でしたよね・・・。
かなり趣旨が変わってきてる気もしなくはないですが、もう少しだけ突っ走ります;

幌加内とそばの歴史

大きなテーマはこれで最後、残りは幌加内がいつからこんなそばの町になったのかという素朴な疑問です。
そばの歴史の分かる資料があるとのことで、一般の方でも興味の持てる内容のところだけを抽出してシンプルな年表にしました。

そばの作付けが始まったのは1973年(昭和48年)、その時はそば畑は38haとごくわずかでした。その7年後、1980年(昭和55年)にそばの作付面積で日本一となります。その時の作付面積は、なんと353ha。
昭和、平成、令和と時代を3つまたぎ、2020年(令和2年)の段階では3,420ha。日本一からさらに10倍。作付けを開始したときから比べたら100倍に近い数字です。

同様に幌加内のそばの歴史といえば、2022年にはようやく再開できそうな「幌加内町新そば祭り」も気になります。
始まったときは「いわゆる普通の地域のお祭りっていう感じだったよ」という話も聞いたことがありますが、今では国内でも有数、道内では最大のそば祭りになっています。
そんなそば祭りの来場者の推移なども含めて歩みをみられる年表があったらいいかもと、そば年表の他に新そば祭りの年表も提案しました。

番外編:商品POP

上記以外に5枚ほど商品用のPOPも作成しました。

長くなってしまってすみません;
しかもこの案件、昨年末スタートでお正月メインで作業して年明け納品したものの、道の駅は冬季休業なのでなかなか実績として撮影ができず・・・と言っているうちにすっかりバタバタして撮影したあとにも放置していたというかわいそうな実績です(笑)

ひとつずつ作業の内容を思い出していたら、いろいろと知見を得ることができて面白かったこともあり、紹介がボリューミーになってしまいました。
ここまでたどり着いてくださった方がいるのかどうか微妙ですが、道の駅に立ち寄ることがあったら、ぜひチラッと見てやってください。